日記

日々おもふこと

ママサの賢いおばあさん

近所を歩いていたりしてインドネシアにいたときのことを、ふと思い出すことがある。留学中、インドネシアスラウェシ島を一周した時ママサという山間の地域に行った。

 

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日本から見るとここ!

これが行くのも一苦労で、マカッサルという大きい街からバスに揺られて6~7時間はかかった。マイクロバスと呼ばれるサイズなんだけど、人、もの、荷物がぜったいに荷重を超えてつめつめに詰め込まれて、舗装されていない道を進んだ。日本でいう4人がけの場所にぜったいに!6人以上は座っていた。

 

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中はぎっしりの荷物と人でした

 

途中、なんども水を含みすぎた粘土質の土にはまってストップしたし、揺れすぎてお互いの肩がぶつかりあって笑いが止まらなかった。例えるなら、ずっとロデオマシーンに乗っている感じ。今となっては、あんまり乗りたくないけど、その時はそんな経験ができている自分が誇らしかった、と思う。

 

それで、ママサという町。イスラム教が多いインドネシアでは少数派のキリスト教が多い地域だった。私が泊めてもらった家は、村の集落の平均的な家だった。おばあさん、孫二人、孫娘の夫、若い夫婦の赤ん坊と親せきの子が住んでいた。

 

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泊まった家ではないけど、この地域の伝統的な家

インドネシアの都会ではない村に行くと、そこについただけで、あぁ日本の昭和30年代ってこんなところだったんだろうなという雰囲気があるのだけど、この場所はそこまで田舎という雰囲気は感じなかったことを覚えている。

 

私はその家に3泊くらいして、一緒にテレビを見たり、ごはんを食べたり、お墓参りに連れて行ってもらったりした。ひとつひとつが特別なことのようで、それはそれで日常的で自分の生活とも変わらないところがあったりで、新鮮だけど穏やかな毎日だった。

 

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抱かせてもらった子供。日本人とあんまり変わらない。

で、そのおばあさん。なかなか賢い人だった。当時83歳くらいで、旦那さんは亡くなっていて、家で刺繍とか裁縫の仕事をやっている人だった。結構本格的なミシンがあって驚いた気がする(下の写真の左側を見てください)。

この地域は民族衣装が赤、ピンク、オレンジと鮮やかな刺繍で有名な地域でそのおばあさんもお針子の一人だった様子。デザインの下絵は書かないで、勝手に手が動いて刺繍すると言っていた。すごい。

 

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この地域の民族衣装


このおばあさんそういえば日本語を覚えている人だった。日本語の「起立」「礼」を覚えていたから、小学校は日本式教育だったことがあったんだと思う。日本軍はこの村まで来てたんだ。農業を教えてくれた、サンダルを履くことを教えてくれたって話してくれた。

 

このおばあさんは、顔つきからして、賢者の顔というか、しまった顔のおばあさんだった。しゃんとしているし、きついわけではないけど、はっきりとした生き方をしてきたようなオーラだった。

 

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ママサには温泉があった

ある時、その家でけっこう現代的なインドネシアのドラマを見た。韓国ドラマのリメイクみたいで、美女と美男が反発しあいながら惹かれあうというありきたりのラブコメディー。

 

ラストでお互いが告白して、キスをしあうかという場面で、二人の口と口が近づいたときに、男が「お前、息がくさいぞ」と一言。それで、女が「はぁ~何それ?」と怒ったかと思うと、男が女を抱き寄せて「愛してる」といってドラマは終わっちゃう。

 

は?

って思ってみんなの反応を見るとそのおばあさんは、

 

「何このドラマ。何がいいたんだかさっぱり分からん。物語の体をなしてない。」

 

とさらっとひとこと言うと自分のやっていることに戻った。

 

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ママサで撮った空

その時の自然な様子と言い方がすごくかっこよかった。
やっぱりこの人見えてるんだと思った。言葉で説明すると難しいんだけど自分の持っている感覚に自信をもっている人だと思えた。

 

それは、私の中にある、ここに住んでいる人はこんな考え方をするわけがないというめちゃくちゃ失礼な思い込みなんだけど、その時に自分の思い込みの枠が、がばっととれた。

 

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人は国籍、住んでいる場所、年齢じゃない。どこにいても自分らしくあれるし、かっこよく生きられる。し、私が知らないだけで、かっこよい人はこの地球上にうようよしている。

 

 

だから、今目の前にある自分の環境とか、待遇とかにぐちぐち不満をたれたくなると、実際たれているけど、

自分の中にもくもくと

 

いや?あんたどの口がそういうの?

そういうことなの??

そうじゃない実例をあなたはたくさん見てきたんじゃないの?

どこにいても、どんな環境でも、その場所でその人らしく活き活き生きている人がいるって知っているんじゃないの?

 

という心の声がしてくる。

 

言葉も環境も違うインドネシアでの生活をガッツで乗り切った自分に恥ずかしくないのと言われているみたいで、なんか恥ずかしくなる。

 

今の自分は今しかないけど、これまでの経験って掘り起こして意識して見ないと、ちゃんと発見できないし、自分が自分を認めないと足場がぐらぐらして次の一歩が出ない。

 

 と実感。

そういえば今日来ている服もママサの民族衣装に似ている。

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でも、このおばあさん、そんな一面だけではなかった。この家族には親戚からもらわれてきたの女の子が住んでいて、なんとも微妙な関係性だった。

 

続く。